第1講 吐き気

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ホームルーム開始のチャイムが鳴り、 廊下に出ていた生徒たちが教室へと入ってくる。 それに混じる大柄な中年男性。担任の篠原先生だ。 身長は175cm程なのに、体重は100kgを超えている。 その肥満体型から、 先生には『篠ブー』というあだ名が付いていた。 10月も半ばになって空気が冷えてきたというのに、 未だ生地の薄いYシャツ姿で、 胸ポケットからは汗拭き用のハンカチがはみ出している。 見ているほうでさえそうなんだから、 本人はさぞかし暑苦しいんだろう。 「ほぉらぁー、チャイム鳴ってんだぞー。席に座れーっ」 甲高い声にせかされ、 立っていた者たちが足早に自分の席へと向かう。 その中に・・・・・・ 背の高い、ヘビの様な顔をしたヤツがいた。 石岡 信弘(いしおかのぶひろ)。 僕の隣の席に座る生徒だ。 石岡くんは、 こっちに向かって歩きながらチラリと僕を一瞥する。視線が合う。石岡くんの目つきが歪む。 ヘビが獲物を見つけたときのような冷たい目つき。 その威圧に耐えることができず、僕は目をそらした。 机に向かって顔を伏せ、彼が着席するまでじっと待つ。
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