第1講 吐き気

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「おい、エススリー」 ズボンを履き替えようとしたところで、隣から声がかかった。 ・・・・・・・・・石岡くんだ。 「今日はブリーフじゃないんだな」 「う・・・うん」 からかうように言う石岡くんと、小さな声でうなずく僕。 このやり取りに反応して、 数人の生徒から下卑た失笑が漏れる。 今、僕の下着はチェック柄のトランクス。 以前はブリーフだったけれど、酷く馬鹿にされたのでやめた。 馬鹿にされるそのときまで、 僕はブリーフがカッコ悪いものだとは知らなかった。 「今まではいてたブリーフはどうしたんだよ?」 今度はやや離れた所からの声。 黒ぶち眼鏡をかけた丸顔の生徒・・・ 藤代 強(ふじしろつよし)が、笑いながら僕を見ている。 「父さんにあげた・・・」 「あはは、オヤジのトランクスと交換したのか?」 「違うよっ」 「でも、オヤジくせぇガラのトランクスだよなぁー、それ」 藤代くんに続いて、教室の隅から追い討ちがかかった。 赤塚 幸治(あかつかこうじ)。 横に広いガッチリした体格で、 クラスの中でも、とりわけ元気の良いリーダー格だ。
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