悪の教科書 Textbook Of Evil

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午前9時15分。すでに授業が始まっている。 教室の扉を開けると、たくさんの視線が僕に集中した。 「おー真田ぁ。遅刻か?」 教壇からかかる中年男性の甲高い声。 担任の数学教師、篠ブー・・・篠原(しのはら)先生だ。 下の名前は忘れたけれど、 とにかく太っているので『篠ブー』というあだ名がついている。 「すみません、寝坊しました」 「んんー・・・さっさと席につけぇー」 篠原先生は、それだけ言うと出席簿にチェックを付けて、黒板にカリカリと二次方程式を書き始めた。 僕は静かに自分の席へと歩みを進め、机の上にカバンを置く。 向けられていたクラスメイト達の視線は、すでに黒板や教科書へと戻っていた。
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