Siren

ｻｲﾚﾝ

「憲二さん」

怠は憲二に話しかけた。憲二は空返事で返すと

「憲二さんはニューヨークに何しに行こうとしたんですか?」

怠がそう突拍子もなく憲二に質問した。憲二はﾆｯｺﾘと微笑み `良く聞いてくれました。`という感じではきはきと答えた。

「ああ!それはね!僕はニューヨークで音楽の勉強して日本に帰ってトップシンガーになるためさっ!」

憲二は親指を立たし白い歯を見せてまたﾆｯｺﾘ笑った。すると、横にいた竜が

「へぇー憲二さん売れない歌手なんだ売れない歌手!ねぇ～…」

竜は必要以上に売れない歌手を強調すると怠が

「おい!竜!勝手に決め付けるな!」

「だって現に俺この人知らないし」

竜は変な所で正直であった。怠は肘で竜の腹を殴ると 竜は 痛みで声を少し洩らした。

「いいよいいよ本当の事だし」

しかし、憲二はまったく機嫌を損ねていなかった。怠は 俺なら怒ってる と心の中で思いながら憲二に深く頭を下げた。

「まぁ…今はね!売れない歌手だよ!今はね!」

憲二はかなりの+思考であった。自分の夢を真直ぐに突進み必ずトップシンガーになると信じ憲二は毎日毎日、音楽の勉強、作詞、作曲をしてきた。しかし、誰も彼を認めようとはしなかった。

誰も彼を雇ってはくれなかった。
でも、彼は諦めなかった。いや諦められないのだ。

友と約束をしたから

「友達との約束?」

怠と竜が憲二の言葉にくらいついた。

「ああ、昔ね…僕の友達…広てっ言うんだけどね故郷の沖縄で二人でコンビをくんで路上ライブしてたんだ。」

沖縄出身ときき怠は深く頷いた。言われてもおかしくないぐらいの肌の色だったから別に驚きはしなかった。

「…僕達は毎日誰も聞いてくれないのに路上ライブをしたんだ。誰も聞いてくれないんだけど広と路上ライブをするだけで心が晴れるんだ。だから、二人で上京して歌手になろうと誓ったんだ。俺達ならいけるてっ…でも…」

憲二が間をあけたので怠が

「でも?」

と話しを急かす様に聞いてきた。そして、憲二はゆっくりと口をひらいた。

「死んだ…」

「え?」

予想もしなかったので怠と竜はただ声を洩らす事しかできなかった。 すると、憲二が苦笑いをしながら また語りはじめた。

「自分の家の階段で…足を滑らして頭を強く打ったんだ。打ち所が悪く…ね…」

周りに暗い雰囲気に呑まれると