京の鬼

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京の鬼

京、五条大橋、雨が降っていた。 橋の中央に立つ僧兵の姿が見える。 この幕末に時代錯誤な格好 その五条大橋を西側から傘を指し大股で歩いてくる大男がいた。 「おい!刀を置いてゆけ!」 僧兵の言葉に大男は、ゆっくりと背中に提げた大刀をさしだす。 僧兵が刀の柄を握った瞬間 一閃が走る。 脳天からまっぷたつにされる僧兵。 「毎度あり、牛若丸でなくて悪かったな」 散らばった僧兵の刀を拾い集める。 僧兵の死体を無造作に川に蹴り込む男。 血のついた刀を鋭く降りきる。 鋭い眼光と険しい表情は鬼其のものだった。 彼の名は、雷蔵。 不破雷蔵。(ふわ・らいぞう) 表の顔は、骨董品を扱う古物商。 都の西の外れ、桂川の畔で商いを営んでいた。
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