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少年は走っていた。
ただ、走っていた。
理由なんて大層なものなどない。
ただただ走っていく。
夕暮れの赤く染まった道を。
人がいようと気にはしまい。
どうすればいいか分からなかった。
少年はただ走る。
走るしかなかった。
そうすれば、何かよくわからない苛々とする、胸に重く突き上げるようなかたまりが、出ていく気がしたのだ。
時々、走りながら叫んでみた。
何を言うかなど問題ではない。
ただ声を発し、叫ぶということが重要なのだ。
その声と共に、かたまりは出ていってくれないだろうか。
人目など気にしない。
もとより人は、他人のことなど気にはしない。
少年に一瞥をくれると、また何もなかったように自分の道を歩いてゆく。
少年は他人を、また、他人は少年を、気にも留めなかった。
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