君との小さな小さな旅

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ガシャンと音を立てて自転車が花壇に突っ込んだ。 花壇のレンガが一部破損して、土がこぼれて花が…死んだ。 「違うわ、アナタを呼んだんじゃないの。これ…」 千里が指差す先を見ると小さな細いヘビが二匹 文字のようになって蠢いていた。 そこは小さな病院で、 途中から千里の背中ばかり見ていたから気がつかなかったからなのか かなり細い道にいて 破壊してしまった花壇はそこに在ったその小さな病院のもので、 偶然にも花壇を手入れしている人がそこにいて、 目を丸くしてこちらを見ている。 「すみません」 「だって蛇がいたから…」 「千里も謝るんだよ」 「…そうね、蛇の言っている事は間違ってはいないわ…ごめんなさい」 語尾が聞こえない程に小さく小さく謝罪をした千里は 怒られた子どものようだった。 花壇を手入れしていた人はここの医院長だそうで、 にっこり笑って許してくれた。とても紳士だと思った。 ただ条件つきだ。 「じゃあ、君ら一緒に手入れしてくれるかい?」 どこか否定をさせない言い方をするあたり、年齢に比例した経験をしているんだろう。 断る理由なんてなく、二人は言う事を聞きいた。 医院長はにっこり笑って、 三人でレンガを直し、 花を植えた。 死んでしまった花を指差し、 「死んでしまったんですか?」 そう聞くと医院長は答えた。 「まだ、死んでいないよ。ただ瀕死だね」 そう言って笑った。 「二人で手当てをしてあげなさい。花びら土をはらって此処に植え替えるんだ。そして水を少しあげなさい」 二人で一生懸命に手入れではなく手当てすると 花は少し綺麗になった。 医院長が言う。 「これから先の手当ては私がするよ。入院だ。」 また優しい微笑みをくれた。 「君らはもう帰りなさい。もう日が落ち始めているよ。」 千里と二人で一礼して、病院を後にした。 最後にさっき蛇が居た所を見ると 二人とも何処かへ消えていた。
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