Survival 1

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「どうしてっ…私なのよ…。」   「マザー・コンピューターが選ぶのよ。アタシのせいじゃないわ。恨むなら自分の運の悪さを恨みなさい。」   あまりに理不尽過ぎる出来事を、女は受け入れることができず、ただその者を睨み付けることしか出来なかった。 睨み付ける女を物ともせず、その者は再びカバンを開け、中から鈍く光る銃を取り出し、女に突き付ける。 女の息を飲む音が、静かな公園にかすかに響いた。   「知ってると思うけど…拒否すれば『殺人者』としてこの場で殺されなきゃないわよ?それじゃあ、臓器が役に立たなくて、死に損よ?」   「殺人者!?」   女の叫び声に、公園の前を通り掛かった人が一瞬立ち止まったが、状況を察したのだろう…。気の毒そうな表情を浮かべ、そそくさと立ち去った。   「そりゃそーよ。多くの命を投げうってまで自分を守るんだもの…。」   とぼけた口調で話す表情とは裏腹、女は確実に自分には理不尽な死がせまっていることを感じ、再び膝はガクガクと震え始めた。   『逃げなくては…。殺人者でも何でもいい。このままでは殺される。』   身をやっとのことでひるがえし、逃げようとする女を、銃ですかさず撃つこともなく、しかしその表情は、数秒前のものとはガラリと冷酷に変化し、「待て!」と一声上げた。 これが本来の声色なのだろう。トーンの低く、しかしはっきりと響き渡る、男の声。 その声に、思わず女は足を止めてしまった。   「逃げればテメェの家族や友人が代わりになるぞ。」   「…え…?」   口調も男のそれと変わる。   「テメェの代わりに責任取ってもらうんだよ。それでもいいなら…どこへでも逃げな。」   ―そう…。この「サバイバル・ロッタリー」に選ばれた者の多くは、大半が怯え、逃げる。しかし、大半は結局自分の死を受け入れるのだ。いや…受け入れざるを得ない。全世界のメディアも発表していない、この「裏ルール。」 拒否をすればその場で射殺。しかし、選ばれた瞬間に逃げるならば敢えてそれを止めはしない。その人物のデータは全て把握されており、家族、友人までもが調べつくされ、身代わりとして連行される。逃げた者にはたった一言こう告げればいい。 「お前の家族が代わりになる。」と…。―
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