過去の薄紅色-特別編-

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その後の感情ははっきりと覚えていない 幼かったから覚えていなかったのか それとも変わり果てた家の中にショックを受けたのか 大人になってもわからないままである 薄暗い部屋の中外に出ようと手探りで玄関へ向かう その途中にある台所に入る 散らばった割れた皿 台所の隣のトイレを見る 陶器が剥き出しになり中は壁が崩れ落ちていた 玄関へ行くとそこも白い固まった砂のようなもので埋め尽くされていた 靴を引きずり出し 玄関を出ようとするが扉は開かない 何分ほどそこで助けを呼んだだろうか 人のざわめきと何かが崩れ落ちる音だけ聞こえていた 父が金槌を使い扉を壊す 視界が開けた 冬の寒い空気と一緒に そこに広がっていたのは 一瞬見間違える白い雪のような景色 白い壁が雪のように見えた しかし綺麗な幻想とは裏腹に 薄暗い光の中には 二階建ての屋根にあるはずの河原と まっすぐに伸びていたはずの上に盛り上がった砂利道が 広がっていた そこには信じられないというような顔をした家族と 壊れた建物に住む住人が立っていた
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