シド・ヴィシャス

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1984年、借金取りと宇宙人が激突するという不思議なSF「レポマン」でデビューしました。この異色の近未来SF作品は、すぐにカルト・ムービーの仲間入りをし、その勢いに乗って故郷イギリスで撮影されたのが、「シド・アンド・ナンシー」でした。 <映画界のはみ出し者>  彼はその後、1988年にアメリカ映画「ウォーカー」を発表。この作品は、アメリカがかつて行っていた植民地政策をブラックなユーモアを交えて、史実を元に描いたものでした。(もちろん、そこには現在のアメリカも似たようなものであるという、批判もたぶんに含まれていました)主役は、エド・ハリス、音楽には元クラッシュのジョー・ストラマーが参加しました。この作品は、映画的にも実に素晴らしい作品でしたが、アメリカという国の裏側を知ることのできる貴重な作品です。(アメリカのメジャー映画がこんな作品を作ることは永遠にないでしょう)  しかし、対米批判とも言える作品が、アメリカでヒットするはずはなく、興行的には失敗してしまいます。インデペンデント映画作家の彼にとって、一本でも失敗作を撮ると言うことは、出資者がいなくなることにつながり、作家としての死をもたらしかねません。結局彼は4年間作品を撮れなくなります。  1992年、彼はやっと日本のケーブルホーグの出資を得て「PNDC エル・パトレイロ」を製作。その後彼は、製作の本拠地をメキシコに移し、映画のためなら世界中どこへでも行くという姿勢を貫き通し、「ザ・ウィナー」、「デス&コンパス」などを発表して行きます。(彼はもともとルイス・ブニュエルと西部劇の大ファンだっただけに、彼にとってメキシコは夢の土地でした)  彼にとっては、作品を発表するという行為自体、そこへ至るまでの苦労も作品の一部と言えるのかもしれません。これはある意味、音楽界におけるインディーズ系アーティストにも当てはまりますが、映画を一本作るための苦労はCD一枚とは比べものにならないでしょう。だからこそ、彼は映画界NO.1のアウトサイダーと呼べる存在なのです。 <アレックス・コックス追記>  「私立探偵・濱マイク」の「女と男・男と女」(田口トモロオ出演)の監督・脚本になんとアレックス・コックスが登場しました!さすが世界を股に掛ける男です。でも、
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