ハッピーバレンタイン

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 紗江は、何も言えなくなって…ただ泣きながら頷いた。  孝は、紗江の涙を指でふいてホホを撫でた。  「紗江…。」  「孝、私も、私も8年前に孝が、孝が助けに来てくれた時から…ずっと、ずっと…孝の、事が、好き、好きなの。」泣きじゃくりながら紗江が言った。  「でも、私、ば、馬鹿だから…何時も、思ってること、言えなくて…逆の事、言っちゃったりして、今だって、嬉しい、のに、涙が、涙が止まらなくて…」孝がにっこり笑った。  「紗江…好きだ。」孝がそっと紗江にキスをした。 紗江は、真っ赤になって硬直した後…大声で泣き出した。  孝は、ずっと泣く紗江を抱きしめて、幸せそうに頭を撫でた。       その姿を、天音司は離れた場所で見つめていた。 二人の抱きしめ合う姿を夕焼けに見ながら、呟いた。 「ハッピーバレンタイン…」 にっこり何時もの微笑みを浮かべる。 「やっと、約束を果たせた…」 二人を見つめる目はいつの間にか8年前をうつしていた。
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