過去の記憶

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 8年前…「こら!紗江!」  「私悪い事なんかやって無いもん!」つの口を立てて、紗江が言う。  「それは、分かってるけど…あれはやり過ぎでしょ。」母親が深くため息をついた。  この日学校の先生に呼び出された母親は、クラスの男の子三人を怪我させたと先生から聞かされたのだった。  「孝が弱虫だからいけないのよ!あんなやつらにいじめられて、一言も言い返せないんだから!」  「孝君をかばったのは、とても良い事よ。でもね、怪我をさせてしまった事は謝らなくちゃ。」諭すように紗江に言う。  「私、悪く無いもん!」「ちょっと紗江!」紗江はドアを開けて飛び出した。 「公園行ってくる!」紗江の声とともにトビラがしまった。        「紗江ちゃんが助けてくれたんだ!」目をきらきらさせ孝が今日あった事を母親に話す。  「あらあら、じゃあ後でお礼を言いに行かないとね。」母親が台所仕事をしながら言う。  蛇口を締め手を拭いた後孝の目線にしゃがみこんだ。 「でも、何時までも紗江ちゃんに守られてちゃ駄目よ。男の子なんだから。」  「うん。」暗い顔になって孝は、頷いた。  「よし、じゃあ公園に遊びに行っといで。」孝の背中を叩いて言った。
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