過去の記憶

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 男は、公園にある天使の像を見つめていた。  年は18才位だろうか、酷く寂しそうな目をしている。「ラッパを吹く天使…か、これがお前の探してたやつか?」男の後ろから子供の声がした。  背格好は8才位、長い黒髪の女の子がいる。  「いえ、多分同じモチーフなんでしょうが…違います。」男が振り返り少し微笑みながら言う。  「そうか、残念だったな。」無表情に女の子が呟く。  「ええ、生まれた街が一番ありそうだったんですがね。まぁもう壊れてるのかも知れません。」男が相変わらず微笑みながら答えた。  「どちらにしても無意味だぞ、過去に縛られた所で何も無い。我々は、ただ仕事をすれば良い。」女の子は、全く表情を変え無い。  「分かってますよ…」 男がそう言った時…「あー!惜しい!」少し離れた場所で、中学生位の男が三人で騒いでいるのが聞こえた。  よろよろとして、上手く歩け無い老犬を木に縛りつけ、少し離れた場所から石を投げているようだ。  「お前コントロール悪いな。」  「ちゃんと当てろよ。」 へらへら笑いながら騒いでいる。  「ほっておけ、我々には関係無い。…先に行くぞ。」女の子は、男にそう言うと一人で公園から出て行った。
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