過去の記憶

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 男は暫く見つめ、拳を握りしめていたが諦めたようにその場を去ろうとした。  …その時だった。  「ちょっと、止めなさいよ!」大きな声が響いた。        紗江が犬の所に駆け寄って縄を解いた。  犬はヨロヨロと逃げていった。  「おい!餓鬼!なにやってんだよ!」男達が紗江に近づいて来る。  「何よ!あんた達が悪いんでしょ!動物をいじめちゃいけないんだから!」紗江が叫ぶように言った。  「生意気なんだよ!」男の一人が紗江を突き飛ばした。  「きゃあ!」紗江が叫びながら倒される。  「いじめてなんかねぇんだよ。遊んでんの、なんならお前が代わりに遊ぶか!」男の一人が紗江に怒鳴りつける。  紗江は、怖くて涙が出てきそうだった。  「紗江ちゃんをいじめるな!」突然声がして何かが思いきり紗江の前にいる男にぶつかってきた。  突然の事に男は、バランスを崩して倒れた。 孝が泣きそうになりながら紗江の前に立ちふさがった。足がガクガク震えている。  「てめえ!」突き飛ばされた男が孝を平手うちにした。  孝が横に飛ばされる。  「てめえ!ふざけんなよ!」男がさらに孝に近寄る。 「いや!誰か助けて!」紗江が大声でさけんだ。
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