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どうせ、勧誘かなんかだろう。
そう思った方が楽だ。やっぱり友達や家族を追い返すのは気が引けるから。
俺はまたうつ伏せのまま、枕に顔を押しつける。
ピンポーンピンポーンピピピピピンポーン。
チャイムの音がしつこく鳴り響く。こんな状態で泣けるわけがない。
「ああ、もう!」
俺は乱暴に涙を拭いてベッドから起きあがり、玄関へと向かった。
チェーンはしっかりとつけたまま、ドアをそっと開ける。
「ども」
扉の先にいたのはアロハシャツに短パン、サンダルと、わけのわからぬ格好をしたやつだった。右手を上げてにこやかに笑っている。
今、秋なんですけど。夏終わったんですけど。寒くないんですか?
「あの……どちらさん?」
こいつは怪しいヤツ。きっぱりそう決めつけた俺はおそるおそる尋ねた。すぐに閉められるように、左手はドアノブをつかんでいる。いきなり襲いかかられでもしたら、たまったものではない。
「ん? おれ?」
他に誰がいるんだよ。
「まぁ、名乗るほどたいした名じゃないけどさ。”ラフメイカー”って呼ばれてる」
たいした名じゃないと言っておきながら、どこか誇らしげに自分の名を告げるこの男。
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