Strange visitor -変な訪問者-

4/6
前へ
/18ページ
次へ
「ラフ……メイカー?」 「そっ。人にそう呼ばれてるってだけだけどね」 屈託のない笑い。 「で、何の用?」 早く帰らせたいがために、俺はぶっきらぼうに尋ねた。 「ずばり、あんた今泣いてたでしょ? だ・か・ら、あんたに笑顔を届けに来ました」 にこやかな笑顔を崩さぬまま、来訪者は珍妙なことを言う。 笑顔を届けに来た? ラフメイカー……laugh maker……笑いを作る者?  お笑い芸人? なるほど、それならおかしな格好も説明がつく。 でも、カッコつけて英語で”ラフメイカー”って。 まぁ、誰だろうと俺には知ったこっちゃない。 「間に合ってるんで」 「へっ?」 間抜けな面をしたまま、ラフメイカーの言葉が止まる。俺はその隙にドアノブを引いた。 しかし、ドアは閉まらない。ラフメイカーは素早く隙間に足を挟み、ドアをロックしていたのだ。 「ちょ、ちょっと待ってよ。いきなり閉めるなんてひどくない?」 知るか、怪しいやつめ。 「ここさぁ、寒いんだよね」 だから何なんだ。 「だからさぁ、とりあえず中、入れてくれない?」 ちっとも悪びれた様子も見せず、ラフメイカーが部屋を覗き込む。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加