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やがて、電車が動き出したという情報が流れて来る。
「帰ろっか?」
「ですね。」
本当は、もう少し彼女と話していたかったが、明日も仕事だし、予算も無くなりかけていた。
(仕方ないか……)
会計を済ませて外に出ると、まだ雪が降っていた。
「うわぁ……今夜は積もりそうですねぇ……」
「やんだらすぐに溶けちゃうのにネ……クスクスッ……」
白い息を吐きながら、お互いに、じゃれあうように駅へと向かった。
うっすらと積もった雪を滑らないように踏んで歩きながら、俺は考える。
(俺達のお互いの〈思い〉は……すぐに溶けてしまう〈都会の雪〉のようなモノ……お互いの恋人への思いは……なかなか溶けない〈根雪〉のようなモノ……なのかな?……)
(川野さんの〈思い〉は、わからないケド……十中八九、俺の事なんか単なる同僚としか思ってないだろうケド……)
それが少し寂しい気がした。
「じゃ、また明日~」
俺は彼女を見送ると電車を待ちながら酔っぱっらった頭で、ぼんやり考えた。
(俺も自分の彼女にメールでもしようかな……)
―完―
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