第 1 章

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「間に合ったね」 僕が呼んだ声に気づいたみゆは、側に駆け寄りそう言った。 「マジ…初デートで全て奢らされるかと…思った…」 息切れになりならがらも、なんとか言葉を繋いだ。 「本気にしたの?あれ冗談なんだけど…」 「マジ!?」 ふと顔を上げる。 そこには僕の彼女、みうの顔。 ……近い。そして緊張。 思わぬカウンターを食らったかの様に、僕は停止した。 「マジだよ。てかゆきなら分かってくれると思ったのになぁ」 「………」 「ゆき?おーい。大丈夫ー?」 「あのさ、待ってる間ナンパとかなかった?」 「は?何言ってるの?」 私服姿を初めて見たからだろうか。 あまりに可愛かったんだ… 周りが見えなくなるぐらいに。 「その可愛さは危険だな…」 「何が危険なのよ。それに誰が可愛いのよ」 「みゆ」 「今から眼科に行く?」 「いや至って正常だから」 それからちょっとの間、お互いに可愛いだの可愛くないだの… どっちも負けず嫌いな性格。 しばらく続けたら喧嘩になってただろう。 でもね、最初に引くのはいつも僕だったよね。 「もう!ゆきの意地っ張り!」 「そう言うみうもだろ?」 「もう知らない!」 「ごめんって。なっ?機嫌直そう?」 「…どこ行くの?」 「へ?」 「今日のデートはどこ行くの?」 「遊園地か映画「遊園地がいい!!」 全てを言う前に遮られた。 ふとみうの顔を見れば、目はキラキラと輝いていた。 さっきまでの言い争いは無かったかの様に。  
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