雪姫

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触れれば壊れてしまう繊細な身体。 抱き締めたいという衝動を必死に抑えて真摯を振る舞う。   雪のように美しく脆い身体は、天性のもの。彼女は普通じゃなかった。   ―――死んでもいいから、最期に一度だけ抱き締めてと彼女は願った。   溶けてしまうその身体は一緒にいればどのみち長くはもたない。   ―――初めから無理な話だったのだ。彼女と恋愛なんて。 こんなに苦しむのなら、いっそ出会うんじゃなかった。 こんなにも愛しいのなら、恋などするんじゃなかった。   それでも彼女は笑うのだろう   「私は貴方に会えて幸せよ」   長くはいられないし、子供も残せなかった。手を握ったこともキスだって出来なかったけど、幸せだったわ。   いつだってこの身は貴方の温もりを感じてた。心でキスをしてたの。   ――そうして。   僕らは一度切りの抱擁とキスをした。 雪の結晶はきらびやかに崩れてく、辺りに光の粒子をまいて。   冬は過ぎる。   彼女は何も残さなかった。   この胸の痛みは   いつまで続くのか   終わって欲しいのに。 終わらないで欲しい。   雪を見る度に思い出す。   ――
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