歪な愛

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―――ある夫婦がいた。 夫は学者で、彼の知る限り妻ほど理解してくれた人はいなかった。妻も研究に打ち込み生活すらまともに出来ない不器用な彼を愛していた。 ……相思相愛、文句など付けようもないほど幸せな夫婦だった、だというのに。   ―――崩壊は始まる。   夫が死んだ。自然死ではなく蓋然性の殺人。――事故として片付けられたが、真実は違う。 殺したのは妻だった。   ―――愛していないはずがない。愛したのは生涯で彼一人なのだから。 何が、何処で、間違ったのか。     ―――妻は幾許かの命だった。   だから、自分がいないと何も出来ない彼を遠回しな方法で殺したのだ。 ―――彼を残して逝くわけには絶対にいかなかった。 ………愛するが故に。 ―――夫を想いすぎたために。     余談というか終幕―――数日後、妻が死んだ。今度こそ自然死だ。心配事も無くなり気が済んだのかも知れない。  ただ、一つ言えることは。 加害者も被害者も どちらも幸せな笑顔を残していたという――。
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