愛の形

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愛の形

爺さんこと此崎三海好(このざきみみよし)は言うまでもなく変人だ。少なくとも俺にとっては迷惑極まりない存在であることは間違いない。そんなものは幼稚園児でも知ってる常識だ。 ともかくその一番帰ってきて欲しくない人物は、例によって例のごとく、また珍品を集めてきた。つくづくお約束を破らない爺さんだ。今度の品は“変わらない愛を誓う薬”というヤバそうな品物。つーか毒じゃないのか? 爺さん曰く、愛し合った者同士が飲むと、“変わらない愛”を約束してくれるそうだ。 タメそうにも二粒しかなく、つまりは一回分しかない。無論愛を誓うような相手もいないし、いたとしても絶対に使いはしないのだが、効能がホントかどうかは気になるところ。 まぁ、爺さんの品にしては害のない代物だから、とりあえず貰っておいたが、使い道もなく、机の中に眠らせておくことにした。     そして―――何故か早速使う時が来た。使うのはもちろん俺じゃない。 知り合いだ。偶然なのか必然のか、どっかの誰かが糸引いて俺と知り合ったカップルに、この怪しげ薬を渡すのはヒドく憂鬱だが、爺さん曰く死ぬことは絶対にないというし、どうしても欲しいと押し売りセールスが天性なんじゃないかと思いたくなるほどの熱意を向けられたら渡さないわけにもいかないというものだ。 だから、渡した結果、ああなって幸せなのか俺としては微妙なのだが、幸せそうなのだからいいのだろう。他人の幸せにどうこう言えるほど達観してはいない。どうか末永くお幸せに。 ……変えようにも変われないんだけどさ。
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