ひとりごと

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会社に出勤すると待っているのは必ず決まって部長の小言だ。 ストレスのせいか頭の毛が薄く、中の肌色がハッキリと見える。それに部長が動く度に頭からフケが埃のように舞い、近寄りがたくしている。 「おい、聞いているのか!?」 部長が怒鳴り声を上げてくる。 聞いてますってば。と私は内心で言った。声に出さないのは面倒だからだ。 反論すればさらに小言が延びるのは分かっている。だからただ黙って聞いているのが一番だ。 「大体だな…」 とクドクドと部長は私に説教をしてくる。分かったから、頭をこちらに近付けて来るのは止してほしい。フケがかかるから。 「おつかれ。どうだった?」 部長の小言が終わり、私は自分の机に生還すると隣にいる先輩の早苗が聞いて来た。 先輩とは言っても、彼女がこの会社に入るのが私より早かったから先輩だというだけで、歳は私と同じである。 だから私は彼女を呼び捨てにしている。彼女もそれは了解しているようだ。 「どうしたもこうしたも酷かったわよ。なんだかいつもにも増してキツかったわ」 すると早苗は周りをキョロキョロと見渡し、誰もいないことを確かめてから、小声でこう言った。 「その理由はさ。私廊下で聞いたんだけど、部長、妻と離婚したらしいわよ」 離婚…… その言葉は私の頭に重くのしかかった。 部長が離婚したことにショックを受けたのではない。離婚、という言葉が何故か自分にとって近いものだと感じ取れたからだ。 私と夫の関係――― それはどんなものなのだろう? 結婚して二年。今も昔も変わらない暮らしだが、どちらかと言うと冷えつつあると思う。 そういえば最近は遊びにどこかへ二人で出掛けることも少ない。 私と彼の休日はたいてい家にいて、私は家事を適当にし、彼は本を書いている。 そんなんだから、私と彼の関係は冷えつつあるのかもしれない。 いや、もう冷え切っているのかもしれない。 だから離婚という言葉がとても近くにあるように思えてしまう。  
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