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此処は、旧領土の都市「古伯(こはく)」に位置する何の変哲も無い小さな村。
この小さな村から、物語は始まり国の存亡を掛けた戦の始まりと言えよう。
そんな村では、一人の青年が黙々と旅支度を進めている。
「やはり…皆が止めても旅に行ってしまうのか…蔵馬……」
旅支度を進める青年に、一人の村人が悲しい表情を浮かべそっと話掛ける。
この青年の名は「蔵馬(くらま)」。
黒髪に淡い紫色が交じった変わった髪色と、見た目は人優しく戦とは無縁な印象を持つ蔵馬だが、村では進んで自衛団に入り村に来る賊等の討伐に明け暮れていた。
そんな蔵馬だが、ある日を境に村を離れ旅に出る事を村の皆に告げる。
勿論、村の皆が蔵馬の旅立ちに反対していた。
村の皆が何故蔵馬の旅立ちに反対なのか、その理由は亡くなった蔵馬の両親からの約束であり遺言でもあった。
反対されている蔵馬自身も、両親の最期の言葉を聞き今まで守ってきたが、九鳳のやり方に怒りが抑え切れずに仲間を募る為に旅立ちを決意する。
「いくら皆が止めても…もう私は決心しました……
これ以上九鳳を野放しにすれば…皆の苦しみが増すばかり! だから…私がこの手で九鳳の首を……」
旅支度の手を止め、蔵馬は村人の方に振り向くと険しい表情を浮かべ、右手を力強く握り締め返答する。
そんな蔵馬の決心の強さに、村人達は何も言えず黙って見守る事しか出来なかった。
そんな村人達を見兼ねて、一人の老人が杖を突きゆっくりとした足取りで蔵馬に近寄り話掛ける。
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