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「蔵馬よ…ワシ等が止めてもお主なら無理にでも旅に出るじゃろう……
じゃが…それでは残されたワシ等はどうすれば良い?
お主の両親から約束された事を…無下にする訳には行かぬ…皆の気持ちを解って旅立つつもりなのじゃな……」
老人の言葉に、旅支度をしている蔵馬の手が止まる。
だが、暫らく手を止めるも蔵馬は唇を強く噛み締め再び作業を続ける。
これには、老人もお手上げと言わんばかりに頭を抱えため息を洩らす。
そして、全ての支度を終えた蔵馬は荷物を馬に乗せ、腰に愛用の剣を携えると今までお世話になった村人達にお礼の言葉を話す。
「皆さん…今まで有難うございました…亡くなった両親の約束とは言え…こんな私を今日まで育てて貰ったご恩は決して忘れません……
必ず…必ずこの村に戻ってきます! では行ってきます……」
今までのお礼の言葉を語り、蔵馬は村人達に感謝の意を込めて深々と頭を下げた。
そして、馬にまたがると故郷となる村を出発した。
残された村人達は、悲しみを堪え蔵馬の無事を祈り見送った。
此処に、一人の青年が旅立ち歴史の歯車がゆっくりと動きだした。
もう、誰にも止める事が出来ない戦乱への道が今開かれる。
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