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突然背後から声がして、翠堵は驚いて心臓が飛び出しそうになった。
振り返るとそこには、白髪の老父が立っていた。
(あ…ぁ…ビビった……。この店の店員かな?ハハハ……)
バクバクとうるさい心臓を落ち着かせ、翠堵は老父に向き直る。
「じーさん、ここの店員?」
老父はその問いに答えずに不適な笑みを浮かべている。そして……
「あんた、そのゲームに惹かれたのかい?」
ゆっくりと確認するようにもう一度同じ質問が繰り返された。
変なじーさんだなと思いながら「あぁ」と頷く。
「そうかい……」
そう言って老父はカウンターの奥へ行く。
「ちょっ、じーさん?」
何やらゴソゴソと包装を始める老父に翠堵は慌てて財布を取り出し中身を確認する。
財布の中は1000円程しか入っていなかった。
翠堵は振り返り再びショーケースのそのゲームに目をやる。
………あるはずの値札がついていない。
「ちょっとじーさん!待ってくれ!このゲーム値札付いてないよ!?俺、金がないから……」
老父が翠堵を見る。
目が合った瞬間、翠堵はその先の言葉を失った。
「いらん」
「……え?」
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