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老父は包装されたそのゲームを少し乱暴に翠堵に手渡した。
しかし、翠堵は受け取る事を躊躇う。
当然だ。
翠堵はこの店の常連でもないし、ましてこの老父は初対面だ。
タダで、しかも商品を『はい、そーですか』と受け取れる筈がない。
そんな翠堵の心中を察したのか老父は語り始めた。
「あんたはこのゲームに選ばれたんだよ。儂の娘同様にな……」
「……は?選ばれた?じーさんの娘同様!?」
訳がわからず翠堵は聞き返した。
老父は多く語らなかった。ただ無理やりゲームを翠堵に押し付け、とっとと店の外へと追い出す。
「さぁ、とっとと帰んな。そしてゲームを始めれば解る事さ……」
謎を残して老父は店から翠堵を追い出すとさっさと店の奥へと引っ込んだ。翠堵はもう一度店に入ろうと扉に手をかけようとすると何かわからない力に弾かれた。
「…っ!?」
翠堵は再び店内には入れなかった。
仕方なくゲームを抱え、帰路につこうと一歩踏み出して店を振り返ると……
店は忽然と姿を消した。
まるでそこには最初から何も無かったかのように………
(……ハッ、冗談キツいぜ……)
しかし、それは確かに現実だと知らしめるように翠堵の胸には包装されたゲームがあった……。
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