冬の生き様

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やはり外は寒かった 冬は五感が研ぎ澄まされるということを聞いたことがある。 たしかにそう思う しかし、触感だけは例外であるとも思う。 寒さで早くも手がかじかんできた。 手袋だけでも取りに戻ろうか悩んだが、 金縛りのせいであまり時間もない。 仕方がなく足を前に出し始める。 さっきまで降っていた雪は気がつけば止んでいたようだった。 足を一歩、また一歩と出す度に雪が踏み締められる音が聴こえる。 冬の音 静かだが、 さっきまで雪が降っていたという証である。 足を前に出した歩数の分だけ、 その音は付いてくる。 こんなストーカーならあまり悪い気もしない。 玄関の中は暗闇だったが、 雪がどっしり構える夜はなかなか明るいものだった。 蛍雪の功、という言葉がある 夜に明かりをつけることができないほど貧乏だった人が、 夏は蛍の光、冬は雪の明るさで勉強したという話からできた言葉だ。 そんな教訓を思い出してしまうほど、 明るく感じた。 月の柔らかな光にも似ているようだった。 雪の光 冷たい雪が唯一あたたかくなるときなのかもしれない。 なんとなく雪を触ってみるといつもの冷たさは変わらなかったが、 不思議と嫌ではなかった。 かじかんだ手に白い息を吹き掛けながら、 やはり五感が鋭くなってるかもしれないと思った
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