冬の生き様

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時間というのはどんなときでも勝手に流れていくらしい 雪についていろいろ考えていただけで、 時間は足の速さよりも前に進んでいた気がした。 ふと、 ジャンパーのポケットから携帯電話を取り出して開いてみる。 画面に張り付いてる時計は正確な時間を示していた。 あと十五分か 頭の中で自動販売機までの道のりと時間制限と歩く速さを計算してみる。 どうやら余裕で着くという結論が出たようだ。 体が勝手に歩を緩めながら、 ポケットに携帯電話をしまう。 そしてもう片方からタバコの箱を取り出した。 箱の中身はやはり一本のタバコしか入っていない。 時間が経とうが、 ビスケットは増えなかった タバコを口にくわえ、 誰もいなくなった箱をぐしゃりと潰す。 もう一度ポケットをまさぐり、 ライターを取り出して火を着ける。 一連の動作に不自然なものは何もない。 あるとすれば体に悪いであろうことを知りながらも吸い続ける自分自身である。 火が着いたタバコを大きく吸い、 肺に入れる。 先のほうにある火種がより一層その明るさを増した。 口からを肺に溜まった煙を吐くと、 さっきまでの白い息がさらに濃くなったようだった。 そのはっきりとした白い息が空に昇っていくのを、 ただただ他人事のように見つめていた
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