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気がつくと、
タバコの自動販売機はもう見えていた。
もう閉店した商店の前にやはりポツンとしてはいたが、
電灯の光より人工的でまばゆい光を放っていた。
雪の自然な明るさがかすんでしまうほどのその人工的な光は、
機械的な中にもどこか人間にはあたたかいように見えた。
自動販売機の横にあった灰皿でまだくすぶっていたタバコを消し、
何気なく後ろを振り返る。
車が通る道路は光を反射し、
その滑らかを自慢しているようにだった。
反対に歩道は、
雪が降り積もり人の行く手を阻むことに力を込めていた。
どちらにせよありがたくはない
ため息をつきながらも、
目当てのタバコを買うためにポケットの中に手を突っ込んだ。
手のひらに銀色からややくすんだ色になってしまった硬貨を三枚取り出したとき、
ある異変に気付いた。
それは衝撃的で、
できれば気付きたくはない事実であった。
なんと
一枚だけ穴が開いていたのである
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