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アル中で、こっそり料理酒を飲んじゃうばあちゃんちにヘルパーに行った。 しごとは一時間半でごはんつくりと、さんぽ。 足が痛くて動かせなくて、外にでるのを嫌がるばあちゃんをゆっくりゆっくりとリハビリさせる目的だ。   一ヵ月かけて、たくさん話し掛けて、やっと近所の一角を往復できるようになった。   また一ヵ月かけてその角を曲がってすこし先まで行けるようになった。     そして、その角のところに、そのじいちゃんは、いつも居た。   一言二言話すようになってしばらくすると、散歩を嫌がっていたばあちゃんが、いそいそと支度をするようになった。   角に近づくたびに、つないだ手に、ぎゆっ、と力が入り、「ゆっくりいこ、足いたいから」   アル中で最初は口もきいてくれなかったばあちゃん、下ばっかりむいてたばあちゃんが、口紅をひくようになって、たくさんのことを話してくれるようになった。 それはまるで、少しずつ花が開いていくようだった。 ある日、さくらが咲いたからおじいちゃん誘って花見しよ、と言って、私はさくらの枝をかついでいった。 おばあちゃんがおにぎりとお茶をもって、私がさくらをかついで、片方の手をつなぐ。 おじいちゃんは玄関にずっと立って待っていたみたいだった。 ちいさな花瓶しかなかったので「だめだよこれー!」「無理でしょー」と笑いながら詰め込み、おにぎりを分け合って食べた。 もう冷たくなっていたし、梅干しおにぎりは私は苦手だったが、とてもおいしかった。   ヘルパーはそんなことしちゃいけないんだ、ほんとは。 ちゃんとご飯作らなかったことやじいちゃんちでごはんたべたことがバレて結構怒られた。   だけど綺麗なさくらだった。   めがさめるほど美しかった。
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