【現実】

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【現実】

僕は彼女と手を繋ぎ病院へ歩きながら色々と頭の中で言葉を探していた… すると彼女の方から… 「美月…海野美月…」 「えっ!?」 「あたしの名前…」 先を越された…僕も彼女の後に続き自己紹介。 「えっと俺は…佐野奏。15歳だよ」 「あたしも……15歳…」 彼女も同い年なんだ…なんか嬉しかった… そんな話をしているうちに病院に着いた… 「さぁ着いたよ。」 僕がそう言うと彼女は 「二階の西病棟まで連れて行って…」 おいおい…さすがに病院まで案内したんだから自分で行ってくれよ…心の中では少しそう思ったが… 「わかった。いいよ!」 情けない男だ… 病院に入りエレベーターに乗り二階の西病棟に着いた… 「着いたよ」 僕がそう言うと彼女は 「ありがとう」 と言って笑った… んっ!? その時僕は初めて正面から彼女の顔を見た… 彼女…僕の顔を見ていない… もしかして!? 僕は彼女が向いている目の前で大きく手を振った。 やっぱり… 彼女…目が見えないんだ… 「目…見えないの…?」 「えっ?気付いてなかったの?」 嘘だ…何かの間違いだ… でもそういわれると今までの事が一致した。 壁に手を添えて歩いていた事…僕と手を繋いだ事… 僕はそんな事も知らずになんで一人で舞い上がってたんだろう… そんな事を考えている僕に彼女は明るく 「目が見えなくても…耳が聞こえるから大丈夫!」 なんて強い子なんだ… 僕には考えられない… 「一人で大丈夫?」 「ここまで来たら看護婦さんがいるから…本当にありがとうございました。でわ…」 そう言うと彼女は壁に手を添えて歩いて行ってしまった… 僕は複雑な気持ちのままその場を後にした… 目が見えないって…どんなのだろう… 真っ暗なのかな? 僕はそんな事を考えながら倉庫に向かった…
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