【現実】

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それから…数日が過ぎた… いつもは早く起きて、遅刻もせずに学校に行っているのに…寝過ごした… 「やべっ!!間に合わねぇ!!」 僕は額から流れてくる汗なんておかまいなしで走った。 「あっ!そう言えば病院の道からの方が近いや!」 いつもは通らない病院の横の草むら… そこはとても草が生えていてあまり人は通らない。だけどそこを通れば5分は余裕で早くなる。 「しゃあねぇ…少し汚れるけど、遅刻するよりはましだ!」 僕は制服が汚れるのも気にせず草むらの中に入って行った… 「あと少しだ!間に合うぞ!!」 すると…綺麗な音色が聞こえてきた… 僕は走る足を止め音色のする場所を探した… 「あっ!!」 僕の目に映ったのは病院の二階のベランダからバイオリンをひく女の子の姿だった。 「あの子は…確か…一度道でぶつかった目の見えない女の子だ!!」 彼女はまるでバイオリンと遊ぶかの様に楽しくバイオリンをひいていた。 僕は遅刻する事など忘れて彼女の演奏が終わるのをずっと聞いていた… 「うめぇなぁ…」 思わず口に出た時に曲が終わった。 「パチパチパチパチ」 僕は自然と拍手をしていた… 「誰ですか!?」 彼女は慌ててそう言った… 「俺だよ!佐野奏だよ!ほら!この前病院まで一緒に行った…」 「あっ!どうも!この前はありがとうございました!ずっと私のバイオリン聞いてたんですか?」 「最初からじゃないけどちょっと前からね…バイオリン上手だね!」 彼女は照れながらバイオリンを触って僕に言った… 「このバイオリン私が小学生の時にお父さんがくれたの…」 「へぇ…そうなんだ…優しいお父さんだね!!」 「うん…とっても優しかった」 優しかった…??過去形??なんで?? 「お父さん…去年亡くなったの…原因不明の病気で…」 僕はその話を聞いて、言葉に詰まってしまった… 「よく私にバイオリン教えてくれたな…」 そう言って彼女は寂しそうに下を向いた… そんな彼女を見たくなかったから僕はとっさに 「実は俺も音楽やってんだ!」 「えっ!?」 下を向いてた彼女も顔を上げて驚いている… 「まだ始めたばかりだけど幼なじみとバンド組んでんだぁ!!」 僕はどうにか彼女に元気になってもらいたくて彼女との共通点を一生懸命さがした。
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