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騒がしかった街もひと段落する昼下がり。
ギギッっと鍛冶屋の扉が開く音がする。
『いらっしゃいませ』
作業が忙しく、扉の方に顔を向けれず、声だけをかける。
「残念、お客じゃないわよ」
少し高めのすんだ声が聞こえてきた。
そこには、砂金のように輝く髪をした小柄な女性が立っていた。
『なんだ、レナか』
恋人の訪問に顔がほころんだ。
「なんだとは、ごあいさつね。仕事はどんな感じ?」
『ぼちぼちだよ。装飾用のナイフの注文が一件入ったくらいかな』
「この時期に注文があるだけいいじゃない。世間はあの事件があってから、ナイフに対してあんまり良いイメージ持ってないし」
『そうだな。あんまり、贅沢も言えないよな。』
「そうそう、途中で腹立たしい張り紙があったから、破っておいたわ」
『どんな?』
「これよ、こんないたずらするなんて幼稚すぎるわ」
そういって差し出された張り紙に目をやる。
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