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神に遣えし御魂の者
町外れの忘れ去られた教会。
其所には似つかわしくないほど精巧に彫られたマリア像があった。
其れを見つめる女が一人、喪服にも似た黒い服を身に纏い、祈る様な姿勢でいる。
その女は歳の頃は18か9だろう、あどけなさの残る顔に緩い掛るウェーブの金髪が麗しい。
なのに、瞳の金色だけは強く獰猛な獣のようだった。
――修道女
一重にそう呼べば何もおかしな事はない。だが、この修道女は他とは全く違った。
服も普通とは違い裾が短く首が露だし、どちらかと言えば修道女の服がモチーフのドレス染みていた。髪を隠す物もない。
何よりもこの女は神に遣える身ながら、神など微塵も信じていなかったのだ。
抑神に愛されて居るかも疑わしい…。
そんな女の元へ、優しげな微笑み讃えたを男が一人。
女と型は違うが此方も黒い服。神父だろう。
ただ、普通の神父より若く、まだ20歳を2つ3つ回っただけに見える。
「…また祈っていたのですか?」
別に女は祈ってなどいなかった。この女に祈って叶う様な願いは無い。
だが、否定するのも面倒でただ頷いた。
「そうですか…、」
男は何が嬉しいのか笑みを深めた。
女はその笑みが嫌いだった。誰にでも平等だなんて、そんなの偽善だ。だから神父も嫌い。
女はなるべく神父を見ない様に頭を下げつつその場を去る。
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