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声が聞こえる。
「……なのよ。だからね、仕方ないわけ」
意識が戻った。そうはいっても別に寝ていたわけじゃないし、気絶してたわけでもないのに。例えるなら、つけたばかりのテレビのような気分。起きてたのに、連続性のない意識。
私の意識が突然始まった。
「……」
思考がうまく働かない。周りの景色が真っ白なせいかもしれない。疑問も、矛盾も出てこない。
「死にたいの」
声が聞こえた。
白い世界、白い壁紙。私の目の前、しゃがみこんだ女の子。
「可奈ちゃ、ん……」
女の子、可奈ちゃんは不安定な体勢のまま、微動だにせず私を見ている。
可奈ちゃんは死にたい、ともう一回呟く。それはまるで、お腹空いたとか、この部屋は広いねとかどうでもいい感じに聞こえるような声音だった。その調子は私の気を滅入らせるには充分なものだ。
「そんなこと言わないでよ。自殺でもするつもりなの?やめてよね、それは弱い人間がするものよ」
私は小さな声で吐き捨てた。もちろん、可奈ちゃんの耳にはっきり聞こえるように。
「逃げてるだけ、なんだから。」
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