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「逃げるのって、いけないの?」
「まさか。逃げに対して、全面的な否定はしないつもりだけど……この場合は駄目でしょう?」
そう言っても、丸い目は揺らがない。私の言葉をさして意外と感じてないようだ。言われたことがあるのだろう。
彼女からどんな言葉が返ってくるのだろう。そう思っていたら、ただ続きを促すだけの声が放たれた。
「………ん?だってそれで終わりでしょう?そのあとには何も続かないじゃない」
はたして、それは逃げというのだろうか?……うん、違うと思う。それはリタイア。
逃げと棄権って、諦めるっていう言葉のイメージは似ているけれど、やっぱり別のものだと思う。
可奈ちゃんは、相槌を打たずに聞く。きっと、私が巻くしたてるように言ったからだ。
……だって自分でも気付くくらいの、極論だから。想像で、観念的。所詮、机上の空論なんだよ。
逃げるということ。棄権するということ。そんなもの、ただの単語の問題。
下手したら、うっかり話が逸れてしまいそう。
でも自殺とか駄目だ。そんな簡単に言っちゃあいけないこと。
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