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だからこの変わり者とほんの少しだけ、付き合うつもりでした。
絶対にまたボスの座についてやる。この町から出ていくもんか。そんな思いを秘めながら。
「これからはずっと君を描くことにするよ。なんだか買ってくれそうな気がするんだ。――いや、そうじゃないなぁ。僕は君が描きたいんだ。売れても売れなくても。僕はその君の綺麗な目にすっかり魅入られてしまってね。それに君は毛並みもとっても綺麗だし。なのにどうして君は嫌われているんだろうね? 黒猫だから? そ
んなの関係ないのにね」
ある日、いつものように優しい口調で語りかけられた言葉に、黒猫の心が激しく揺れました。
黒猫のことをそんな風に言ってくれる人は、だれもいませんでした。
黒猫だから――そう、ただ黒猫というだけで嫌われてきたのですから。
青年は続けて語りかけます。
「そうだ、いつまでも『君』じゃ変だよね。名前をつけてあげなくちゃ。そうだなぁ……」
青年はしばらく考え、それから「うんうん」と何度も頷き、
「ホーリーナイトだ」
そう黒猫に名付けました。
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