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「ホーリーナイト。分かるかい? 君と出会った日さ。聖なる夜(Holy Night)に僕らは出会ったんだ。だから君の名前はホーリーナイト。ちょっと長いからホリィ、って呼ぶね」
名前。
これも初めてのことでした。両親は黒猫に名前をつけてはくれませんでした。
「黒猫は黒猫。私たちにそれ以外の名前は必要ない」
半ば人生(猫生?)捨てかけたように言った父の言葉を、黒猫はまだ覚えています。
ホーリーナイト。名付けられたその名前を、黒猫は頭の中で何度も何度も繰り返します。
そうしている内にだんだんと黒猫は嬉しくなっていきました。
黒猫改めホリィは青年と暮らしているうちに、青年ことが好きになっていきました。
青年の言葉の一つ一つ、動作の一つ一つに優しさが溢れていました。
青年と接しているといつも心が温かくなりました。ホリィは知ります。本当はこれが欲しかったのだと。本当はこれを望んでいたのだと。
手に入れることができないから嫌い、遠ざけてしまっていた。
でもそれは、いま、ホリィのすぐそばにあります。
ホリィは決断しました。
青年とずっと暮らしていくことを――。
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