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それから青年とホリィの貧しい生活が続きました。
青年は変わらずホリィの絵を描き続けました。
絵の具がなくなり、鉛筆までもがなくなってしまうと、
「絵はね、なんでだって描けるんだよ」
と青年はドロを使って描き始めました。
それはもう売れる絵ではありません。
しかし青年は構いませんでした。
この幸せな時間をできるだけ味わっていたかったのです。
青年は毎日毎日働きにでるかわりに、一日のご飯を探しにいきました。
ご飯と言っても残飯漁りです。
野良犬や野良猫に交じり(時には引っかかれ、噛みつかれつつ)、食べ物を調達して家へと持ち帰っていました。
ホリィは体が小さいのでなんとかお腹は膨れます。
しかし青年はそうはいきませんでした。
日が経つにつれ、青年の体は弱っていきます。
そんな青年の姿を見てもだれも手を差し伸べる人はいませんでした。
青年は弱りに弱り、とうとう倒れてしまいました。
傍らでニャアニャアと心配そうに鳴くホリィの元に、青年は真剣な眼差しで一つの手紙を置きました。
それはおばさんのお店をクビになってすぐ、書いておいたものでした。
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