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ふわり、ふわりと雪が舞う中。
一匹の猫が険しい山道を駆けていました。
頭もまっくろ、胴もまっくろ、足も尻尾もみんなみんな真っ黒な黒猫です。
ただ瞳だけは澄んだ緑色をしていました。
黒猫の口には手紙がくわえられていました。
大切な、大切な今は無き親友との約束が。
黒猫は――ホリィは青年が言った言葉を思い返します。
青年は言いました。
自分のわがままで貧しい生活をさせてしまったと。
しかしそれは違うのです。
わがままなのはホリィの方だったのです。
あの町を出ていきたくなかったのはホリィの方なのです。
それは黒猫の意地でした。
負けたまま去るのは嫌だったから。
ただそれだけが理由でした。
けれど一度ああいった負け方をしただけに、ホリィは勝つ自信を失ってしまっていました。
だから勝負を挑まず、町からも出ず、ずっとあの青年の元で暮らしていたかったのです。
青年はそのことを知らぬうちに感じ取っていたようでした。
青年はホリィのせいにせず、自分で決断し、自分で苦しい道を選びました。
ホリィのことをなんとか町の人に分かってもらおうと、ひたすらに絵を描き訴え続けました。
たとえ自分も嫌われ者になろうとも。ホリィのために、ホリィのために。
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