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手紙を届けるべく青年の家を出たホリィに待ち受けていたのは、しばらくの間忘れていた自分への罵声でした。
ホリィは理解しました。青年が自分を一歩も家から出さなかったその理由を。青年はホリィを守ってくれていたのです。
時には自分も代わりに罵声を浴びて。
しかし今はもう守ってくれるべき青年はいません。
それでも負けるわけにはいきません。
手紙をくわえたその姿から、
「見ろよ、悪魔の使者だ!」
「あれは不幸の手紙だ!届けさせるな!取り上げちまえ!」
そんな馬鹿なことを叫ぶ人間までいます。
なんとでも呼ぶがいいさ。
今の俺にはきちんとした名前があるのだから。
決して消えない、あの青年が付けてくれた名前が。
ホーリナイト。聖なる夜と名付けてくれた。
ホリィ、と優しさも温もりも全て詰め込んで呼んでくれた。
その青年の最後の願い。
渡すものか、絶対に渡すものか。
冷たい言葉や冷たい仕打ちの中、ホリィは一心不乱に町を駆け抜けます。
そうして傷つきながらも、この山道へとやってきたのでした。
これを越えれば青年の故郷。
ホリィはまた考えます。
自分と出会わなければ、青年は死なずに済んだのかもしれない。
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