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町の人は、
「単なる猫の気まぐれだよ」
と無関心にそう答えます。クリスマスの日に聞いたから悪かったのでしょうか。他のことで頭がいっぱいですからね。でも、他の日に尋ねてもやっぱりそう答えるのです。
本当にただの気まぐれ?
――いいえ、違います。もちろん、猫がこの場所に集まるのにはきちんと理由があるのです。
それはほんの少し昔――。
ふわり、ふわりと雪が舞う中。
一匹の猫が夜の大通りを歩いていました。頭もまっくろ、胴もまっくろ、足も尻尾もみんなみんな真っ黒な黒猫です。ただ瞳だけは澄んだ緑色をしていました。
ゆらゆらゆらゆら。
黒猫が歩くたびに、ご自慢のカギ尻尾が小さく揺れます。
黒猫は我が物顔で堂々と通りを歩きます。体は小さいけれど、黒猫はこの町のボス猫なのでした。町の猫たちは彼の姿を見るとどこかへ逃げてしまいます。それは恐れられているというよりは、むしろ嫌われているといった感じでした。
黒猫というものは古くから『魔女の使い』として、不吉なものとされています。魔女という存在が薄れた(いなくなったんじゃないかって? そうは決めつけられないじゃありませんか)今も、黒猫は忌み嫌われています。
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