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怒鳴り声や悲鳴が頭の上を飛び交う中、黒猫は隙間をぬってある裏道へ入りました。
『行きつけの店』へと向かうために。
そこはこじんまりとしたレストラン――の裏口。食材のあまりやお客さんの食べ残しなどを入れるために、大きなポリバケツが2つ置いてあります。
今晩はクリスマス。年に一度の祝いだといって、町の人たちはたいていこの店におしかけ、たいていちょっと豪勢な食事を頼みます。
そして、たいてい全部は食べきれず残してしまうのです。だから黒猫にとっても、クリスマスという日は豪勢な食事が食べられる日なのでした。
当然、そのことを考えている猫は黒猫だけではありません。どの野良猫だってそうです。
バケツの上には二匹、先客がいました。いくぶんか若い猫のようです。
こちらにお尻を向けて、ごちそうをお腹におさめているようでした。
黒猫はにやりと笑い、
――シャアッ!
と鋭く威嚇しました。
バケツの上の猫は驚いて振り向き、相手が黒猫だ知ってまた驚き、一目散に逃げてしまいました。
黒猫はつまらなそうに鼻をフン、と鳴らします。
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