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それから威嚇のポーズを解こうとして――大通りへ出る方ではなく、裏道の先の方からだれかが来る気配を感じました。黒猫は威嚇の体勢を続けたまま、じっと待ちます。
暗がりから現れたのは先ほど逃げた猫でした。
とことこと、怯えた表情でこちらにゆっくり歩いてきます。
いや、その二匹だけではありませんでした。
ぞろぞろとたくさんの野良猫たちが後ろに続いているのです。
見ると、本通りの方からも一匹、また一匹と野良猫がやってきます。
黒猫はすっか十数匹もの猫に挟まれてしまいました。みな若い猫ばかりでした。
「こ、ここなら絶対に来ると思ってた!」
震えた声で逃げた猫の一匹が言います。体もがたがたと震わせて。
「だから若い連中に声かけて、待ち伏せしてたってのか」
黒猫は低い声で静かに問います。
「そ、そうだ! みみみ、みんなでお前をやっつけようと」
「ふぅん……」
黒猫はぐるりと周りを見渡します。
びくっ、と猫たちが怯えました。
「はは、初めからこうすればよよ、良かったんだ! 一人でやっつけに行こうとせず、みみみ、みんなで協力して!」
「……正々堂々じゃないけどな」
「うう、うるさい! おおお、お前がでで、でてかないから悪いんだ!」
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