Evil black cat -不吉な黒猫-

8/10
前へ
/50ページ
次へ
その叫び声と共に、一斉に猫たちが黒猫に飛びかかります。 それはもう、ただただ一方的なけんかでした。 黒猫は本来、素早い動きで相手を惑わし倒すのですが、こうも囲まれてしまってはどうしようもありません。 必死に爪を牙を振るいますが、どうしたって黒猫の方が深く傷ついてしまいます。 「こらっ、やめないか」 けんかがぴたりと止みます。レストランの裏口が開き、一人の青年が出てきたのでした。 青年は髪はボサボサ、服はボロボロで、しかし目だけは綺麗な優しい目をしていました。 手には紙袋が握られています。 「やめないか」  青年がもう一度言うと、若い猫たちはさーっと散っていきました。 あとには傷だらけで横たわっている黒猫が残されました。 「よってたかって可哀相なことを……」 青年は店の中へと引っ込み、誰かを呼びました。 ひどく慌てた様子でおばさんが青年と一緒に裏口から出てきます。 お店の主人の奥さんです。 「どこだい? けがしてる猫ってのは――おや、まぁ黒猫じゃないか」 おばさんは黒猫の姿を見つけ、露骨に嫌そうな顔をします。 おばさんも黒猫が嫌いなようです。 「黒猫なんて放っておき。構うんじゃないよ」
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加