眠り姫

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「ねぇ…聞いて…」   早百合が突然フラフラしながら 後ろから私の肩に手を乗せ話しかけてきた。   「何?また おかしな妄想話し?」   私は 歩くスピードを 緩めず また振り返りもせずに 返事をした。   ここは 都内の とある高校  今は調度 朝の登校時間。 軽く上り坂になっている道を 沢山の生徒が 校舎を目指し歩くいつもの風景…   早百合とは…同じクラスの 「一条 早百合」 そして 私は 「近藤 茜」   早百合とは 小三からの友達だ。 早百合は かなり変わってる子で いつもクラスでは浮いた存在だ。 そんな早百合の相手が出来るのは 長い付き合いの私しか居ないのだ。   早百合は いつも おかしな妄想話しをする。 最初のうちは 皆真剣に話を聞くが 途中で 聞いた事が馬鹿馬鹿しくなる内容だ。   ある日は 帰宅中に突然立ち止まり   「あー!!!」   と叫ぶから 何事かと近寄れば 道端に落ちていた石を 拾い上げて。   「この石 凄い丸ーい! きっと 昔の人が願い事を叶える為に 綺麗に丸くなるまで 削って お祈りした石なんだわー! 素敵ー!」   「な な 何だと?」   私も周りに居た 生徒も ポカーンな状態だ。 何でそんな発想なんだ? しかも なぜ叫ぶ?   恥ずかしい… 近くに居る私が恥ずかしいではないか?   私は 早百合が 熱い眼差しで見詰める石を 奪い取り サッカー選手並に 空中に 蹴り上げた。   「あーん 茜ちゃん 何でぇ ぇぇ!」   石は 見事に弧を描き 見えなくなった。   「ハァハァ…」   私は 恥ずかしさで 心拍数が上がり肩を揺らして息をした。   「もー…意地悪だなー!  茜ちゃん…歴史的発見  だったのに…」
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