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朗々と唱えられた言葉に風が反応する。
「なんなんだよ…っ」
ユルは吹き荒れ始めた荒野を振り返る。
荒れ狂う風の中で一カ所、無風地帯を探すためだった。
「《風竜》【ウィンド・ドラゴン】!!!!」
しかし声の主はその隙さえ与えず、次の言葉を紡ぐ。
今まで吹き荒れているだけだった風が、ゆっくりと形を成していく。否、成していくように見える。
やがて、それは風を纏う竜になった。
風が素早く渦巻いているからか、竜の体は白と透明の色から生まれていた。
日の光や青空を映し出したそれはとても幻想的で。
「わぉ」
ユルは少なからずその竜を見て驚いた。そのユルを見て、クロスは驚いた。
「っと、見とれちゃいられんよな」
はっと我にかえったユルは自分の頬をぱんぱんと叩き、気を入れ直した。
「クロス、頼む」
「任せて!!」
ユルは竜へむかって走り出し、クロスは文字を空中に書き始めた。
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