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途端に竜のものではない凄まじい殺気がユルへと放たれる。
「うっわ…警戒されてるし…」
ユルは困ったように苦笑した。
困っているようには見えなかったが。
「早く出てこいよ…じゃないとさ」
ユルはにこにこと笑いながら竜の方に歩み寄った。
少年が持つ、無邪気な笑顔そのもので。
竜は待ってましたとばかりに唸りをあげ、風の刃をユルに振り上げた。
「危ないな」
笑いながら簡単にそれを避け、ユルはそうもらした。
辺りに骨の欠片が舞う。
「それに、ケンカ売るなら相手を選ばないと」
ユルはそう言って、自らの右拳を竜からは見えないように体で隠した。
竜は先ほどの攻撃が上手くいかなかったことに怒り、今度はユルに突進した。
「あと、場所ね。…本当は消したくないんだけど…」
ユルは目の前に迫り来る竜を見て呟く。その目は怒りが宿っていた。
そしてそれに反応するかのように隠された右拳の辺りから気があふれた。
「《秘・水風華》【ヒ・スイフウカ】」
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