風吹く街で

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ユルの口から紡がれた唄は澄んだ青空に吸い込まれていった。 「いつ聞いてもステキな声ね。大丈夫。魅入られないわ、きっと」 ほう、と息をついてクロスはユルを見た。 ユルはクロスに振り返って、笑顔を見せた。少し、悲しそうな、嬉しそうな笑顔を。 「そうだな」 この土地へ来てから初めてユルの瞳に安堵がうかがえた。 「じゃあ行くか。次の土地へ」 「そうしましょう。まだ存在しているところはあるから」 ユルとクロスがまた別の土地へ向かって足を踏みだそうとしたとき。 二人は殺気を感じた。 「《風》【フ】!!」 明らかに第三者である者の声が荒野に響いた。
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