ノーキャスト

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「――でさ、学校の裏の山の洞窟に勇者の剣が眠ってるんだってよ」 そいつのその言葉に、俺の思考は瞬間的に停止した。 そして再び動き出す。 再起動の影響でやたら緩慢に進む時間を確かめ、会話として違和感の無い返答の瞬間を待つ。 笑顔を装備し準備完了。 「そんな馬鹿なこと言ってないでさ、次の授業は――」 言葉の意味から笑って逃げた。 清々しいまでの思考放棄。 (現実が忙しい、馬鹿なことに構ってられるか。) そんな作った表情と思考で騙したのは俺。騙されたのも俺。 本心に従って食い付けば、物語の主人公の友達として不思議出来事に巻き込んで貰えたかもしれないのに……なぁ。
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